夜を照らす月影のように#4
魔法銃を片手に持ちながら物の怪?を見つめるエリカさんの言葉に、メルは「違う」と即答する。

「……これは、物の怪じゃない……」

「物の怪じゃ……ない……?」

近づいてくるゾンビに矢を放ったリオンは、そう呟いてメルに顔を向けた。

「……アンデッド……か?」

僕が問いかけると、メルは「そうだね」と頷くと杖を真っ赤に染まった空に掲げる。杖先が光を放って、そこから飛び出した光線がアンデッドたちに降りかかった。

それを食らったアンデッドは、次々に黒い霧となって消えていく。

「……アンデッド自体は、そんなに強くないね。でも……この数、僕らだけじゃ厳しいぞ……一旦、引けたら良いんだけど」

「……無理だよ。物の怪の親玉を倒さないと、元の世界には帰れない……」

僕がメルの呟きにそう返すと、メルは「くっ……」と苦虫を噛み潰したような顔をした。

僕は魔法で刀を作り出すと、近くにいたゾンビを斬り付ける。斬った感触はないものの姿は消えていて、アンデッドがますます不思議な存在へとなっていた。

「……リオン、エリカさん!」

僕が戦おう、と言おうとリオンの方を向いたと同時に、雷が近くに落ちたかのような凄い音が響く。

「……」

リオンはさっきの音を気にすることなく、弓に矢を番えるとアンデッドに向かって矢を放つ。リオンが放った矢は光を放って、物凄い音を放ちながら飛んでいった。
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