策略家がメロメロ甘々にしたのは強引クールなイケメン獣医師
「動け。また宝城みたいにガード下のような、けたたましい声を上げる」
「心の準備とか。あ、訪問するのに、手ぶらはダメって両親が」
「これ」
手さげ袋を指に引っかけた、右手を掲げて見せてきた。
「私が訪問するのに申し訳ないです」
「急遽、決めたのは俺だから、桃は気に病むな」
「洋服も正装のほうが」
「いつも清楚なワンピースだ、今日も可愛い。そのままでいい、かしこまるほどのことではない」
淡々とした表情で、のうのうと言い放つ。
「そんな言っても」
「嫌か」
「いいえ、ご両親にお逢いするのは、とても光栄です」
それなら、シンプルに考えろだって。いえいえ、急すぎるって。
「桃は愛想がよく、人見知りをせず、誰の懐にも入る。どこに出しても安心だ」
人の気も知らないで、ぬくぬくと。
「そんなことはない、わかっている」
また、心を読む。
「宝城と自分自身に逢うと思っていろ。そのじれったさは、取り越し苦労だと実感する」
卯波先生にとっては心配ご無用でしょうよ。ひとごとだから、よく言うよ。
「四の五の言わずに、俺に任せろ」
強引さは相変わらずなんだから。
私の重い足取りなんか、ものともせず、今日も意気揚々と街を颯爽と闊歩して、私の腕をすいすい引っ張って行く。
院長も言ってたね、ご両親は庶民的だって。いつも通りの私で大丈夫かな。
「あのときの庭園にスイカズラを見に行ってから、ご実家に行くんですね」
「正解といえば正解か、正解だ。今日は別の道から行こう」
別の道だって。
まだ今日で二度目なのに冒険するんだ。
卯波先生ったら大胆ね、迷子にならないといいけれど。
「著しく方向音痴の桃といっしょにするな」
ありゃ、エンパス発揮。
別の道なら、またいろいろな屋敷が見られるから楽しみ。
「好奇心旺盛な瞳がきらきら輝いている」
すでに、目に飛び込んできた屋敷に目が釘付け。
卯波先生の手から蝶々のように、するりとすり抜ける私の意識の矛先は、すでに庭園の中のスイカズラ。
「夢中になると、子猫や子犬のようだ。遠くに行くな」
振り向いたら、卯波先生が本当にそこにいる。
「わかってます」
幸せは夢じゃないんだね。溢れる喜びを押し隠すことができない。
浮き足立ったまま、どこかへ飛んで行っちゃいそう。
歩幅が大きくなって、嬉しさのあまり走り出しちゃった。
「心の準備とか。あ、訪問するのに、手ぶらはダメって両親が」
「これ」
手さげ袋を指に引っかけた、右手を掲げて見せてきた。
「私が訪問するのに申し訳ないです」
「急遽、決めたのは俺だから、桃は気に病むな」
「洋服も正装のほうが」
「いつも清楚なワンピースだ、今日も可愛い。そのままでいい、かしこまるほどのことではない」
淡々とした表情で、のうのうと言い放つ。
「そんな言っても」
「嫌か」
「いいえ、ご両親にお逢いするのは、とても光栄です」
それなら、シンプルに考えろだって。いえいえ、急すぎるって。
「桃は愛想がよく、人見知りをせず、誰の懐にも入る。どこに出しても安心だ」
人の気も知らないで、ぬくぬくと。
「そんなことはない、わかっている」
また、心を読む。
「宝城と自分自身に逢うと思っていろ。そのじれったさは、取り越し苦労だと実感する」
卯波先生にとっては心配ご無用でしょうよ。ひとごとだから、よく言うよ。
「四の五の言わずに、俺に任せろ」
強引さは相変わらずなんだから。
私の重い足取りなんか、ものともせず、今日も意気揚々と街を颯爽と闊歩して、私の腕をすいすい引っ張って行く。
院長も言ってたね、ご両親は庶民的だって。いつも通りの私で大丈夫かな。
「あのときの庭園にスイカズラを見に行ってから、ご実家に行くんですね」
「正解といえば正解か、正解だ。今日は別の道から行こう」
別の道だって。
まだ今日で二度目なのに冒険するんだ。
卯波先生ったら大胆ね、迷子にならないといいけれど。
「著しく方向音痴の桃といっしょにするな」
ありゃ、エンパス発揮。
別の道なら、またいろいろな屋敷が見られるから楽しみ。
「好奇心旺盛な瞳がきらきら輝いている」
すでに、目に飛び込んできた屋敷に目が釘付け。
卯波先生の手から蝶々のように、するりとすり抜ける私の意識の矛先は、すでに庭園の中のスイカズラ。
「夢中になると、子猫や子犬のようだ。遠くに行くな」
振り向いたら、卯波先生が本当にそこにいる。
「わかってます」
幸せは夢じゃないんだね。溢れる喜びを押し隠すことができない。
浮き足立ったまま、どこかへ飛んで行っちゃいそう。
歩幅が大きくなって、嬉しさのあまり走り出しちゃった。