貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~
 いつものナディアならゲルハルトの反応を待つが、今はあまりのんびりしていられなかった。

「ごめんなさい、失礼するわね」

 ドアを開けて入ると、部屋にゲルハルトの姿はなかった。

 しんと静まり返っているのを不思議に思いながら、続き部屋になっている寝室へ踏み込む。

 思った通り、ゲルハルトはベッドで横になっていた。

 しかし他者の侵入に気づいてすぐに起き上がり、警戒するように耳を立てている。

「なんだ、おまえか」

 普段よりも簡素な寝衣に身を包んだゲルハルトは、ナディアを見てそれだけ言った。

「勝手に入ってごめんなさい。あなたの看病をするようエセルに頼まれたの」

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