政略夫婦は念願の初夜に愛を確かめる〜極上御曹司の秘めた独占欲〜
茉莉花の名を出され、離そうと掴んだ手が止められる。
茉莉花の話とは一体なんなのか。そう思っているうち、早苗は「入って」と部屋の中へ俺を押し込む。
「茉莉花の話って?」
「そう焦らないで。取引き先から、美味しいシャンパンをもらったの。一杯付き合うくらいいいでしょ?」
俺を横切り、早苗は部屋の奥へと入っていく。
仕方なくあとに続き、「座って」と言う早苗に従いソファに腰を下ろした。
妻がいる身として、何より茉莉花を愛しているから、友人とはいえ個人的に女性とふたりきりになるのは避けたい。
早苗はシャンパンとセットになっているグラスを箱から取り出し栓を抜く。
「あんまり冷えてないのが残念だけど、拓人と乾杯できるからいっか」
そう言ってグラスを差し出した。
黄金色のシャンパンが注がれていき、「乾杯」とグラスを重ねる。
飲む気はないため、そのまま口はつけずグラスを置いた。
「飲まないの?」
「ああ。まだ仕事も残ってるんだ」
「そう。少しくらい付き合ってくれてもいいのに」
どこか不満そうな様子も気にせず、「で?」と本題を促す。
「話って?」
急かすような態度がおかしかったのか、早苗はふふっと笑う。グラスを手にしたまま立ち上がり、なぜか俺の掛けるソファに座り直した。