政略夫婦は念願の初夜に愛を確かめる〜極上御曹司の秘めた独占欲〜
一瞬にして、この間の食事会の出来事が頭に蘇る。
早苗さんの距離がやたら近く、拓人さんの奥さんは彼女なのではないかと思ってしまったくらいだった。
偶然、だよね……?
まさか、示し合わせたなんてことは……。
「そう、だったんですね」
「ああ、ごめんね。こんなこと、わざわざ知りたくなかったよね」
「え……?」
「茉莉花さん、気にされるだろうと思って」
食事に招待してもらった日。
私が拓人さんと早苗さんが仲良さげにしているのを見て、浮かない顔をしていたのを隆史さんは気付き声をかけてくれた。
もしかしたら今も、こんな話を聞いてあのときと同じような顔になってしまっているのかもしれない。
「いえ、大丈夫です。ごめんなさい」
「ぜんぜん大丈夫な顔してないよ」
隆史さんが俯き加減の私の顔を覗き込む。
「すみません。私……」
「何か、不安になるようなことでもあるの?」
不安になこと……。それは、早苗さんがそばにいるかもしれないこと。
「早苗の態度が、茉莉花さんを不安にさせてるのは俺にも伝わってる。でも、夫婦仲に自信があれば、離れていたって何も心配しないと思うんだ」