インビジブル・ブルー
埃と油の匂いに包まれた部屋の中に、少女は横たわっていた。

裸ではない。制服のシャツとミニスカートを身につけていた。もちろん、千切れた袖には血が付着したままだ。

意外なことに、縄は解かれていた。ガクの姿も見あたらない。

僕は少女を見下ろした。

ブラインドが降りているせいで、やけに部屋が薄暗い。それが少女の美しい女のラインを、よりいっそう神秘的に浮かび上がらせていた。

沈黙の中、レイが筆を走らせた。

「何を描いている」

「空」

「この暗がりでか?」

「……そう」

抑揚のない声でレイは言った。彼女にとって、色は頭の中ですっかりできあがっているようだった。

「ガクは?」

「知らない」

「知らないだと?」

「私が目を覚ました時には、もう誰もいなかったもの」

だからここで絵を描いていたの。とレイは言った。

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