仮面夫婦のはずが、怜悧な外科医は政略妻への独占愛を容赦しない
少し前『脳外の先生方の情報はご家族のことを含め、完璧にインプットされてます』とは言っていた。
だからって……。大知の眉間に皺が寄る。
医局につきドアを勢いよく開けると、キョロキョロと閑の姿を探したがいない。
(今日は休みか?)
彼女と共有しているカレンダーを確認しようと、タブレットを引き出しから取り出す。
そのときふと、違和感を覚えた。ずっと引き出しにしまっていた離婚届が、なくなっているのだ。
(どこにいった?)
受け取った日から出した覚えも、触った覚えもなかった。奥のほうに入り込んでいるのかもしれないと思い急いで中を探るが、いくら探しても見当たらず、大知の顔に不安の影が走る。
(誰かが持ち出した? いや、まさかな……)
他人の離婚届なんて盗む人なんていないだろう。そもそも、人のデスクを漁るようなことをする奴は……。
そうこうしていると、医局のドアが開く音がした。見れば閑だった。