仮面夫婦のはずが、怜悧な外科医は政略妻への独占愛を容赦しない


 最初、クラスの友達はバカにしていたけど、実際は大知の言った通りで杏が通り過ぎるとメダカは杏についてまわり、くれない人には見向きもしなかったのだ。

 休みがちで、なかなか友達ができなかった杏だったが、メダカのお陰で、一躍人気者になったのだ。

「あの日から、大知さんは私のヒーローでした」
「ヒーローって。でもあの日がなかったら、今こうやって一緒にいなかっただろうな。鯉に感謝だな」
「そうですね」

 運命とは不思議なものだ。一つでも歯車がずれていたら、出会えていなかったかもしれないのだから。

「メダカでも飼うか?」
「いいんですか?」
「あぁ。俺がいないときは、杏を癒してもらおう」

 言いながら、そっと杏の顔を後方へと誘う。形のいい唇が近づいてくると、杏はそっと目を閉じた。

「んっ……はぁ」

 さっきも濃厚なキスを永遠にしたのに……。

 大知はキスが好きなようだ。


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