国際弁護士はママとベビーに最愛を誓う~婚姻解消するはずが、旦那様の独占欲で囲われました~
「……玲菜」
潤む視線に気づいた彼は、チェアーの肘掛けに置いてきた手を伸ばして私の手首を掴む。
「誘ってる?」
彼の声は少し掠れている。私が返事をせずにうつ向いていると、彼は立ち上がり、手繰り寄せてくる。
「……忙しいならいいの」
「俺が断ると思うか?」
唇の端を上げて笑った久嗣は、私を背後のベッドへ倒した。指で頬を撫でられ、目を閉じた。しかし今夜は目に焼き付けておかなければと思い、すぐに開ける。
「仕事ばかりになってごめん。家のことも凌太のことも玲菜にまかせきりで。今日は、とくに疲れているように見えたから」
だから抱こうと思わなかった、という言い訳だと気づき、私は言葉に詰まる。いつも触れてもらえるのを待っている。夫としての義務でしている行為だとわかっていても、私はこの瞬間だけは、愛されていると錯覚して満たされていた。
「……疲れてないよ」
今夜は一生分の嘘が欲しい。これから先、久嗣を解放した後、私は凌太とともに生きていく。
寂しい夜に負けないように、誰かの温もりを求めなくても生きていけるように、体に刻み付けてほしいのだ。
「玲菜。そんなこと言うと寝かせてやらないぞ」
「うん。いいよ」