国際弁護士はママとベビーに最愛を誓う~婚姻解消するはずが、旦那様の独占欲で囲われました~
ハンカチを受け取り、瞳から零れている涙を少量だけ吸い込ませてもらった。とても化粧が落ちかけの顔をぐいぐい拭う気にはなれない。
隣にこんな人が座っていたなんてまったく気づかなかった。彼も私の泣きべそをうるさく感じていただろうか。同じ日本人に目撃されていたのかと思うとなぜか恥ずかしさが増してくる。
「そんなに泣くシーンありました?」
彼はスクリーンに目を向けながらさらにつぶやいた。映画はいいのだろうか。そういえば、この人も男性ひとりでラブロマンス映画を観ているなんて珍しい。
彼の瞳にはスクリーンの光が反射しているものの、それを楽しんでいる様子はまったくない。
「……すみません。いろいろあって」
「まあいろいろありますよね」
こんなりゆったりとしたシートなのに彼の長い脚は収まりきらずに余っており、窮屈そうに組まれている。
「あ、あの、こちらに住んでいる方なんですか?」
しまった。思わず話を広げてしまった。映画の最中なのに迷惑ではないだろうか。
しかし心配は杞憂に終わり、彼はスクリーンから私へと目を移し、「はい」と小さくうなずく。