国際弁護士はママとベビーに最愛を誓う~婚姻解消するはずが、旦那様の独占欲で囲われました~
残念なことにおかしなところに入ってしまい咳き込みは止まらない。「すみません」や「Sorry」をがんばって捻り出そうとしてみたが、途中で咳が出てかき消される。先ほどまでの悲しみの涙とは別の涙が滲み、顔も熱を持ってきた。
すると、右隣のシートがギッと音を立てた。
「……使いますか」
片言でないスムーズな日本語が聞こえたかと思うと、目の前にチェックのハンカチが差し出されていた。
ハンカチの次に、それを握っている骨ばった手、ジャケットの袖、腕、と視線を動かしていき、やがてその人の顔がぼんやりと見えてくる。日本人だ、と胸が騒ぐとともに、彼の顔のよさに圧倒された。
目鼻も口も、輪郭も、すべてがこれでもかというほど整っている。こんなにも精巧に見えるのは辺りが暗いからかもしれないと思い目をこらしたが、先ほどまで彫りの深い外国人俳優をずっと見ていたはずなのに、ふと目の合ったハンカチの男性の方が魅力的に映る。
「不要でしたか?」
「へっ……」
目の前のハンカチは一度控えめに引っ込められようとした。
「あっ……いえ! ありがとうございます!」