Dear my girl

 沙也子は不思議な気持ちで一孝を見つめた。

 無愛想なのが玉に瑕だけど、はたから見ればパーフェクトな人だ。それなのに、ド平凡な沙也子を子供の頃から好きだったと言い、不器用な愛を向けてくれる。等身大の男子。

 どうしてここまで好きになってくれたのかは、正直分からない。永遠の謎な気がする。

(でも、それでも……)

 沙也子はいつだって一孝を信頼している。
 だから、一孝が選んでくれた自分のことも信じたい。そう思っているのに、なかなか難しくて。
 すぐに不安になってしまうのは、自分に自信がないからだ。

 言葉が足りないのは沙也子だって同じだし、恥ずかしがらずに伝えていれば、こんなすれ違いはなかったのかもしれない。

「わたしの方が、涼元くんにがっかりされたと思ってた」

「そんなわけ……! 俺がどんなに、」

 一孝が勢いよく顔を上げる。
 沙也子は一孝の手を取り、その指先に口づけた。

「涼元くんこそ、わたしのことがどう見えてるのか知らないけど。いつも、すごく嬉しいよ。大切に思ってくれてるのが伝わってくるから。涼元くんとくっつくの好きだよ」

 沙也子を見つめる一孝の瞳は揺らいでいるように見えた。真意をはかりかねているみたいに。

 気持ちを伝えるというのは勇気のいることだ。
 受け身でばかりいないで、沙也子も努力をするべきだった。

 せっかく気持ちが通じ合っているのだから、沙也子は一孝が考えていることをもっと知りたいし、自分が思っていることも知ってほしい。

「だ……大好き、だから。わたしが涼元くんを嫌うなんて、絶対にないよ」

 一孝はしばらく放心状態で沙也子を見つめると、ゆっくり横に倒れていった。

「す、涼元くん?」

 沙也子は慌ててベッドを降りて、彼の顔を覗き込んだ。
 一孝はごろりと仰向けになり、片手で目を覆った。

「……やべえ。よかった……心臓止まるかと思った」


 沙也子は頬を染めて苦笑した。
 本当に自分なんかのいったいどこがいいのか。

 気がついたら身を屈めていた。
 自分からキスをするのは初めてだった。

 びっくりしているのが微笑ましくて、沙也子はもう一度唇を寄せた。
 胸がどきどきと破裂しそうだけど、恥ずかしさよりも、自然と寄り添いたい気持ちの方が高まった。

 一孝の手が背中に回り、あっという間に体勢が入れ替わる。
 気がつけば見下ろされていて、すぐに唇が重なった。

 何度か触れるだけのキスを繰り返すと、一孝は身体を起こした。沙也子の背中と膝裏に手を入れ、ゆっくりと抱き上げる。

 確かにベッドがあるのに床ですることじゃないなと、沙也子は顔が熱くなった。
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