Dear my girl
*
「わたし、ちゃんと生きてた」
隣で、げほげほっ、と盛大に咳き込む声がした。
ヘッドボードにもたれてペットボトルに口をつけていた一孝は、ひとしきりむせると、焦った顔をした。
「谷口、死にそうだった……?」
「死にそう、というより、融けちゃうかと思った」
素直に思ったことを言えば、一孝ははっきりと顔を赤らめ瞠目した。
そんなに何か変なことを言っただろうか。
ぼんやりして頭が働かない。こういう態度が疲れて見えるんだなと思ったけれど、確かに瞼を開けているのも億劫だった。
「むりとか、いやとか、思ったわけじゃないよ」
念のため否定しておく。
もっと毅然と言いたいのに、口がうまく回らず、妙に舌ったらずになってしまうのが恥ずかしい。
一孝はペットボトルを置くと、布団の中に入って沙也子を抱きしめた。
微笑み合って、軽く唇を合わせた。
それから彼の胸に顔を寄せる。
あたたかい。身体が密着して、一孝の鼓動を感じる。
とくとくと聞いているうち、次第に瞼が重くなってくる。頭やこめかみに一孝のキスを受けるのもまた眠気を誘った。
唇は頬に移動し、顎に手がかかって唇が重なった。
啄ばむようなキスは、だんだんと深さを増し、舌が絡んだところで沙也子はぱちっと目を開けた。
「……涼元くん?」
一孝は身体を起こすと、沙也子を組み敷いた。
耳の後ろにちゅっと音を立てられ、どういう状況かようやく分かってしまった。嘘でしょう。
「あ、あの、待って」
「言っとくけど、さんざん煽ったのはそっちだからな」
「なにそれ」
いったいいつ。
そう言っているうちにも耳たぶを甘く咬まれて、沙也子はぴくんと肩を震わせた。
「朝飯は作らなくていいよ」
微笑まれて、沙也子は「うう……」と唸った。
全身疲労感でいっぱいだけど、こんなに愛しげに見つめられてしまえば。
だって、沙也子も一孝のことが好きなのだから。
「……お手柔らかにお願いします」
そう畏まって言えば、一孝は嬉しそうに笑った。
沙也子は、近づいてくる彼の唇を受け入れるため、ゆっくりと瞳を閉じた。