Dear my girl
「ほら。涼元、お弁当食べてるじゃん」
「それで、どうしてわたしが?」
うかつに本当のことは言えず、かといって律に嘘はつきたくなくて、沙也子はのらりくらりとかわすことしかできない。律は見透かすようににやりと笑った。
「いつも学食だったんだよ。勇猛な女子がお弁当渡そうとしたことあるんだけど、みんなの前で冷たく断られてた。そんなアイスマン涼元が二学期からずっとお弁当」
(ええー……。それ知ってたら、お弁当なんて作らなかったのに……)
顔に出さなかった自分を褒めてあげたい。
「……また誰かが渡したんじゃない?」
「だから、それがあんたなんでしょ。最初一緒に登校してたし、また近所に住んでるの? もしかして、一緒に住んでたりして」
沙也子は勢いよく首を振った。
「全然、全然。絶対、一緒になんて住んでないから」
全力で否定したものの、律は表情をあらためた。
「え、なに。冗談だったんだけど。まさか、ほんとに?」
「違うっ 隣なの」
言ってしまってから、ぱっと口を押さえた。この態度も、何もかも自分で墓穴を掘ってしまっている。
律は目を丸くした後、ジト目でにじり寄ってきた。
「さーやーこー」
「うう……」
うまい誤魔化しが思いつかず、結局律に説明することになった。
(律なら……いいか。あとで涼元くんに謝ろう)
隠しているのが少し後ろめたかったので、一孝には悪いが、律に話すことができて沙也子はホッとしたのだった。