Dear my girl

 後ろめたさを感じつつ、ドキドキ緊張しながら息をひそめて中に入る。
 彼の部屋を見るのは初めてだった。

 モノトーンを基調としたインテリアで、とてもすっきりしていた。シンプルな学習デスクには、たくさんの本が山積みになっている。赤本もいくつか置いてあった。

 彼らしい部屋だと思ったが、寝込んでいるからか少し空気がこもっている。
 忍び足でベッドに近づくと、一孝が苦しそうに眠っていた。呼吸が荒く、ひどく汗をかいている。額に触れてみれば、かなり熱が高い。

(言ってくれればいいのに……)

 今まで具合が悪くなっても、いつもこうして一人で耐えていたのだろうか。沙也子自身も身に覚えがあるだけに、やるせない気持ちになった。

 一度タオルを取りに部屋を出る。窓を開けるのは外気が低いので体に悪いと思い、ドアを開けて換気することにする。

「少し、触るね」

 話しかけてもまだ意識はなく、沙也子は冷たく絞ったタオルを当てた。顔と首元を拭いてあげると、いくらかすっきりしたようだった。
 冷却シートのフィルムをぴりりとはがし、一孝の額にペタッと貼る。気持ちいいのか、少し表情が和らいだ。

 これで薬が飲めればいいのだけど。そう思ってしばらく見守っていると、うっすらと瞼が開いた。

「あっ、涼元くん。大丈夫?」

 熱に浮かされた、ぼんやりと焦点が合わない瞳で見つめてくる。こんな無防備な姿を見るのも初めてだった。

 一孝は、じっとこちらを見つめると、沙也子の頬に手を伸ばした。

「……夢?」

「え?」

「夢なら、いいか」

 いきなり腕をつかまれ、引き寄せられる。一孝の上にそのまま倒れ込み、ぎゅっと抱きしめられた。
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