春色の恋−カナコ−[完]
「ありがと」

誰にともなくつぶやいたありがとう。

ここにいる皆に伝えたい。


ありがとう、って。


結婚式もあと少しで終わりを迎える時。

新郎新婦からの花束贈呈でお父さんとお母さん、カオリさんのご両親が前に呼ばれた。

私もカメラを構えて前のほうを見て、おにいちゃんの挨拶とカオリさんの手紙を涙をこらえながら聞いていた。

泣いちゃうんじゃないかってくらい緊張が伝わってくるおにいちゃんの挨拶。

泣きながら、すごく素敵な言葉でつづられていたカオリさんの手紙。

それぞれの両親に花束を贈り、会場内は感動に包まれていた。

私が握ったカメラでは、うまくピントが合っていないと思うけど。

それはそれで、想いでってことで許してほしいな。


すごく素敵だった結婚式は無事に終了し、お客さんも帰って残ったのは家族だけで。

夜、別のお店で二次会があるらしいけど、学生時代の友達がメインらしくて、誘われたけど行くのを戸惑っていた。

「まだ時間があるから、始まるまでに考えてくれればいいから」

なんて、感じの男の人に言われたけど。

泣きつかれた私は少し横になりたかったし、何よりも河合さんと一緒にいたくて。

ちょっとだけ、二人きりで甘えたいなんて、駄目かな…。
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