春色の恋−カナコ−[完]
「いえ、なかなか覚えられないなぁって」

恥ずかしくて、メモ帳で顔を仰ぐようにして答える。

顔が、熱い…。

「ふふ。大丈夫、上手にできているわよ」

私の仕事ぶりを見て、そんな風に言ってくれる藤井さん。

彼女に言われると、本当に安心できるから不思議。

「がんばります!」

与えられた仕事をこなし、あっという間に一日が終了した。

休憩時間などにいろんな人が話しかけてくれて、そのたびにみなさん丁寧に名乗ってくださるので今日だけでかなり顔を名前を覚えられたような気がする。

「それでは、お先に失礼します」

「お疲れ様。また明日ね」

新人の私は、与えられた仕事が終わったこともあって、今日も定時で上がることができた。

まだ仕事をしている他の人には申し訳ないけど、実際私が残業したところでできることも限られていて。

会社を出てから携帯電話を確認しても、着信やメールはなくて。

そう言えばいつも読んでいる雑誌が発売されているはず。

駅前にあった大きな本屋へ行くことにし、駅へと向かって歩き出した。

駅に着いてから河合さんに仕事が終わって本屋にいるとメールして。

きっと、まだ仕事中なのだろう。

返事は返ってこなかったけど、欲しかった雑誌を持ったまま、別の本を見たりしていて。

気が付くとあっという間に1時間も経っていた。


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