朝、目が覚めたら意地悪なアイツと一緒のベッドで寝ていた件について
「何があったらか知らないけどお兄ちゃんすごく落ち込んでるから帰ってきなさい?」
「…やだ。今お兄ちゃんの顔見たくない!」
「じゃあどうするの?」
「由貴(ユキ)ちゃんの所泊めてもらう」
「全く…それなら良いけど、由貴にあんまり迷惑掛けないのよ」
由貴ちゃんというのは一歳年上の従姉妹だ。
お兄ちゃんがあんなんだから顔も見たくないくらいの喧嘩はよくあって、その度にお世話になっている。
由貴ちゃんの家に泊まるとなればお母さんもOKしてくれるしこれで一安心。
「従姉妹のお家泊まる事にしたよー」
「それじゃあ、従姉妹の家まで送る…家どの辺?」
「そういえば春野と山田君の家の方面だよ」
「そうなんだ、じゃあ行こう」
春野はそう言うと手を繋いでくれる。
春野の手……何だか安心する。
今日散々一緒にいたのに、由貴ちゃんの家に着いたら春野と一緒にいられる時間が終わってしまうのが急に名残惜しくなってくる。
もう少し一緒にいたいな…
行く前に由貴ちゃんに連絡をしようとすると春野が口を開いた。
「琴音…あのさ、昼間母さん出掛けただろ?あれ父さんと待ち合わせして出掛けたんだけど…そういう時はいつも2人帰って来ないんだ」
「へぇ!仲良しなんだねぇ!いいなぁ」
「じゃなくて!今日うちに来ないか聞きたいんだよ!」
「え?」
春野の家に?
行きたいけど、春野と二人だけのところでお泊まり……
「……でも…春野と二人っきりになると…春野意地悪するんだもん」
「断る理由それだけ?」
「へ?」
「だったら決定。うちに連れてく……琴音の嫌がるような事は絶対しないから安心しろよ」
春野は私の手を引いて春野の家に向かって歩き出した。