知ってしまった夫の秘密
 家に着いて玄関に入った途端、痛いくらいに動悸がして気分が悪くなってきた。
 キッチンで水を飲んで、フラフラとリビングのソファーに座り込む。

 どれくらいボーッとしていただろう。すっかり日は暮れていて、部屋の中が暗いことに気づく。

 頭をそろそろ動かそう。
 巡二には私から話をすると村本さんには伝えている。
 彼にも聞きたいことはあるし、今後の私たちについてもきちんと話し合わなければならない。夫婦を継続するのか、否かについても。


 ガチャリと玄関扉の開く音がした。巡二が帰ってきたようだ。


「ビックリした! 部屋の電気つけずに真っ暗な中にいたら驚くだろ。……え、飯は?」


 私の様子がおかしいことよりも、自分の夕飯が気になるのか。
 そのひとことで、夫は私にとことん興味がないと思い知らされた。


「今日、あなたの不倫相手に会ったの」

「……は?」

「村本 利英さん。同じ会社で働いてるでしょ?」

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