再愛婚~別れを告げた御曹司に見つかって、ママも息子も溺愛されています~
 真綾に子どもがいるということを、彼は知っただろう。でも、それ以上の情報を彼に渡したくはない。

 彼に迷惑がかかるのは一目瞭然。何が何でも、隠し通さなければならない。
 今はとにかく逃げなくちゃ。だけど、やっぱり身体は動いてくれない。
 
 そんな真綾がハッと我に返ったのは、央太が手首を掴んできたからだ。
 慌てて彼から離れようとしたのだが、強い力で掴まれているために逃げることができなかった。

「真綾、久しぶりだな」

 六年ぶりに聞く声。懐かしさと切なさが混じり合って、なんだか泣きたくなってしまう。
 涙声にならないようグッとお腹に力を入れたあと、真綾は口を開いた。

「ご無沙汰しています……永江さん」

 他人行儀を装う真綾を見て、央太は顔を顰める。
 だが、ここが真綾の職場であり、誰の目に止まるかわからない。それを理解した様子の央太は、掴んでいた手首をゆっくりと離した。

「さっきは大丈夫だったか」
「え?」
「ノアさんと言い合っていただろう」
「あ……」

 内容が内容だけに、何も言葉にできない。
 たじろいでいると、央太は眉間に皺を寄せて問い詰めてくる。

< 58 / 224 >

この作品をシェア

pagetop