追放公爵令嬢ですが、精霊たちと新しい国づくりを頑張ります!

 さらには「精霊が苦しんでいるので力を使わないでほしい」などとジョフロワたちに訴え始めたのだ。
 そのため、はじめは優しかった公爵も、次第に冷たく厳しくなっていた。

 公爵が嘘を言うなと叱っても、リゼットは言いつけを守らない。
 とんだ貧乏くじを引いてしまったと後悔したものの、すでに王太子であるジョフロワと婚約しているため気軽に養子縁組を解消できないでいた。

 だが、リゼットを介してソレーヌとジョフロワが恋仲になってくれたおかげで、王太子妃の父という立場は守られる。
 要するに、公爵にとってはもうリゼットは用なしなのだ。

 もちろんリゼットは真実しか口にしていなかった。
 成長するにつれて痣が濃く、力が強くなっていったジョフロワやソレーヌは遊びで力を使う。
 そのたびに使役される精霊をリゼットは見ていられなかった。

 誰に信じてもらえなくても、精霊たちの苦しみを見過ごすわけにはいかない。
 だからこそリゼットは養父に叱られようとも多くの者たちに嘘つきだと言われようとも、訴えを止めることはしなかった。

「なんとひどい娘だ……。己の非を認めず、私を貶めようというのか? 今まで何不自由ないよう面倒を見てやったというのに、この恩知らずが!」

 怒りに満ちた養父の言葉にリゼットは怯んだが、震える体を抑えるようにギュッと両手を握った。
 その右手に優しく温かなふわふわの毛が触れる。
 リゼットがハッとして見下ろすと、白銀の狼がそばにやってきていた。

「ジェイド……」

 狼は半年ほど前に王宮に迷い込み兵士たちに追い詰められていたところを、リゼットが助けたのだ。
 それ以来リゼットに懐き、宝石のような美しい翠色の瞳をしていることから、ジェイドと名付けてかわいがっていた。

 だがそれがまたソレーヌの気に障ったらしい。
 屋敷にそのような野蛮な獣を連れて入るなと言われ、リゼットは別邸で暮らすようになっていた。
 その狼が――ジェイドが王宮に再び現れたのだから、ソレーヌが見逃すはずがなかった。
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