追放公爵令嬢ですが、精霊たちと新しい国づくりを頑張ります!
ジェイドの姿に気付くと、わざとらしく悲鳴をあげる。
「きゃああ! 怖い! またリゼットが狼を私にけしかけるんだわ!」
「いい加減にしろ、リゼット! ソレーヌは関係ないだろう! なぜソレーヌを恨む!?」
ソレーヌがありもしないことを訴えると、信じたジョフロワがリゼットを責めた。
今までもずっとリゼットに嫌がらせをされていたと嘘を吹き込まれていたのだろう。
「まさか、そんな――」
「殿下、助けて!」
「ソレーヌは下がっていろ」
自分だけならまだしもジェイドになにかされては困るとリゼットは否定しようとしたが、ソレーヌの声に遮られてしまった。
ジョフロワはソレーヌを背後に匿うと、右手を振り上げる。
「殿下、おやめください!」
火の精霊に命令を下したのだと気付いて、リゼットはジェイドを庇うように抱きしめて体で覆った。
大きなジェイドを連れて逃げることはできない。
なによりそんな時間はないことをリゼットは知っていた。
「なっ…リゼット、どけろ!」
ジョフロワは逃げると思っていたリゼットが狼を庇ったことでさすがに焦ったようだった。
勢いをつけすぎたせいでジョフロワにはもう精霊を止めることができず、右手から小さくも鋭い炎の矢が放たれた。
遠巻きにしていた招待客たちから悲鳴があがる。
だが炎に包まれることを覚悟したリゼットは、いつまでたっても痛みも熱さも感じないことを不思議に思って目を開け、その状況に混乱した。
ジェイドに抱きついていたはずなのに、見知らぬ男性に抱き上げられているのだ。