リピートする世界を人魚姫は揺蕩う
今日もそうして、海の上で揺蕩っていた。
そこへ一艘の小型ボートが現れた。
そこには、美しい顔立ちの彼が金色の髪をなびかせていた。
思わず、ちゃぽんと潜り込んで、姿を隠した。
(どうしてひとりでこんなところにいるの? 危ないじゃない)
愛しい人の姿を見て、心が泡立つ。
「サリファ! サリファ! いるのなら、出てきてくれ!」
突然、名前を呼ばれて、心臓がとまりそうになる。
まさか、私を探しているの?
もしかして、囚われていたときのことを恨んで、私を討伐しようとでもいうのかしら?
「サリファ、お願いだから、出てきてくれ。君のことが忘れられないんだ!」
心を揺らがす美しい声が切なく響く。
私の好きな声が私の名前を呼んで乞う。
(忘れられないって、どういう意味? もしかして魅了がちゃんと解けていなかったのかしら?)
それならまずいと、海上に姿を現した。
「サリファ!」
目ざとく私を見つけた王子様は、なにを思ったのか、海へ飛び込んだ。私のもとへ来るように。
「ケリー!」
つい名前を呼んでしまった。
呼ばないと決めていたのに。
呼べば心が溢れてしまうから。
私のもとへ泳ぎついたケリーは私を捕まえた。
「よかった。もう私の名前を呼んでくれないのかと思っていた」
深い藍色の瞳はしっかりと私を見つめ、微笑んだ。
魅了の気配は……ない。
「もう、私のことは飽きてしまった? もういらない?」
甘やかな声で矢継ぎ早に聞かれる。
飽きた、いらない、そう答えるのが正解だと思った。
でも、そんなわけないでしょう?
何度も恋して、消えてなくなっても、また恋して、忘れられなかったのは私のほうよ。
なにも言えなくて、ただ彼を見つめていると、唇を合わされた。
「私を海の底に連れていってくれ。王子の地位は返上してきた」
信じられない言葉に息を呑む。
「なん、で……」
私の問いに彼は美しい笑みを浮かべた。
「海の底での生活はぼんやりとしか覚えていない。だが、君が『さようなら』と別れを告げたとき、私は君への恋に落ちたんだ」
どうしようもなく、とことんね、とケリーは言葉を続けた。
「恋……」
「うん。それ以来、君のことが頭から離れない。もう君なしでは生きられないんだ」
求めて求めて得られなかった言葉を、あきらめたときに聞かされている。
──これは夢? 海の泡のようにパチンと弾けて消えてしまう夢に違いないわ。
茫然と彼の整った顔を見つめる私を、逃さないというように強い視線が囚える。
「これは私の意志だよ? ねぇ、なにか言って?」
私の唇の輪郭をなぞるように指で撫で、ケリーは甘く囁く。
「私をいらない?」
「いる! いるわ!」
こらえきれず、ケリーに抱きついた。
「でも、いいの? もう二度と離してあげないわよ?」
「私はもう帰るところのない元王子だよ。ずっと君のそばにいさせてくれ」
唇を何度も合わせて、特別な息を吹き込む。
海に沈んでいきながら、私たちはお互いの唇を貪りつづけた。
──They lived happily ever after.
そこへ一艘の小型ボートが現れた。
そこには、美しい顔立ちの彼が金色の髪をなびかせていた。
思わず、ちゃぽんと潜り込んで、姿を隠した。
(どうしてひとりでこんなところにいるの? 危ないじゃない)
愛しい人の姿を見て、心が泡立つ。
「サリファ! サリファ! いるのなら、出てきてくれ!」
突然、名前を呼ばれて、心臓がとまりそうになる。
まさか、私を探しているの?
もしかして、囚われていたときのことを恨んで、私を討伐しようとでもいうのかしら?
「サリファ、お願いだから、出てきてくれ。君のことが忘れられないんだ!」
心を揺らがす美しい声が切なく響く。
私の好きな声が私の名前を呼んで乞う。
(忘れられないって、どういう意味? もしかして魅了がちゃんと解けていなかったのかしら?)
それならまずいと、海上に姿を現した。
「サリファ!」
目ざとく私を見つけた王子様は、なにを思ったのか、海へ飛び込んだ。私のもとへ来るように。
「ケリー!」
つい名前を呼んでしまった。
呼ばないと決めていたのに。
呼べば心が溢れてしまうから。
私のもとへ泳ぎついたケリーは私を捕まえた。
「よかった。もう私の名前を呼んでくれないのかと思っていた」
深い藍色の瞳はしっかりと私を見つめ、微笑んだ。
魅了の気配は……ない。
「もう、私のことは飽きてしまった? もういらない?」
甘やかな声で矢継ぎ早に聞かれる。
飽きた、いらない、そう答えるのが正解だと思った。
でも、そんなわけないでしょう?
何度も恋して、消えてなくなっても、また恋して、忘れられなかったのは私のほうよ。
なにも言えなくて、ただ彼を見つめていると、唇を合わされた。
「私を海の底に連れていってくれ。王子の地位は返上してきた」
信じられない言葉に息を呑む。
「なん、で……」
私の問いに彼は美しい笑みを浮かべた。
「海の底での生活はぼんやりとしか覚えていない。だが、君が『さようなら』と別れを告げたとき、私は君への恋に落ちたんだ」
どうしようもなく、とことんね、とケリーは言葉を続けた。
「恋……」
「うん。それ以来、君のことが頭から離れない。もう君なしでは生きられないんだ」
求めて求めて得られなかった言葉を、あきらめたときに聞かされている。
──これは夢? 海の泡のようにパチンと弾けて消えてしまう夢に違いないわ。
茫然と彼の整った顔を見つめる私を、逃さないというように強い視線が囚える。
「これは私の意志だよ? ねぇ、なにか言って?」
私の唇の輪郭をなぞるように指で撫で、ケリーは甘く囁く。
「私をいらない?」
「いる! いるわ!」
こらえきれず、ケリーに抱きついた。
「でも、いいの? もう二度と離してあげないわよ?」
「私はもう帰るところのない元王子だよ。ずっと君のそばにいさせてくれ」
唇を何度も合わせて、特別な息を吹き込む。
海に沈んでいきながら、私たちはお互いの唇を貪りつづけた。
──They lived happily ever after.


