夫の一番にはなれない


その夜。


「來、どうしたの?さっきから元気ないみたいだけど」

「ん……いや、ちょっと考え事してて」

「そっか……何かあった?」

「別に、大したことじゃないよ」


來は視線をそらし、何かを飲み込むように目を伏せた。


本当は問い詰めたい。

でも、それができない自分が悔しい。


來はまだ、「好き」と言ってくれていない。

それはわたしも同じだ。


けれど、その沈黙が、これから何かを壊してしまいそうで――。


< 110 / 227 >

この作品をシェア

pagetop