夫の一番にはなれない
「どうしたの?もしかして早苗さんのこと?」
早苗さんは決して悪い子ではないのだけれど、先生たちの間では手を焼いている生徒の一人でもある。
それに先生全般を毛嫌いしていて、まともに話ができる先生は数少ないのだ。
彼女が心を開いてくれる大人が少ないのだけれど、その中の一人にわたしが含まれていることが光栄でもある。
「早苗さんじゃなくて。馬淵さんの方よ」
「馬淵さん?2組の?」
「そう。あの子たちの目立つ集団いるでしょ?その子たちって酒井さんをいじめていたグループなのかしら?」
「女子同士でいざこざがあったっていうのは聞いてるけど、詳しいことは分からないのよね。酒井さん本人とも話ができる状態じゃないみたいだし。それに同じクラスの子は何もなかったって言って話さないみたいで」
「滝川先生もしょっちゅう教室に顔を出してたみたいだけど、先生の目の前で堂々といじめる子はいないわよねえ。今はSNSが流行ってるし。それ使われたいじめだと、発見も難しいのよね」