身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました

 昴とお風呂に入ってあれこれ考えているとなんだか病みそうになってきたので、思考を切り替えて目の前の宝物を愛でることにする。


「昴の絵、かーくんすごく喜んでたよ。ありがとね」
「ん!」


 嬉しそうに返事をした昴は、浴槽に浮かべたキリンとウサギのおもちゃを「これ、かーくん。これ、ぼく」と見立てて遊んでいる。

 実際に会っている時はそうでもなさそうだったのに、懐いてくれていたんだなと思うとすごく嬉しい。顔に出ないところはやっぱり嘉月さんに似ている気がする。


「昴、すっかりかーくんのことがお気に入りになったね」
「おきにーり?」
「好きってことかな」


 そう言ってキリンとウサギをくっつけると、昴はふーんと頷き、なぜか指で丸を作る。


「かーくんね、こんくらいすき。ママ、こーんくらいすき」


 ママの時は両手を広げて丸を作ったので、私は思わず「かーくんちっちゃ!」とツッコんで笑った。

 そりゃあ、まだ数回会っただけだもんね。男性が苦手なこの子が、好きだと言ってくれているだけですごいことだ。
< 158 / 276 >

この作品をシェア

pagetop