身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました

 確かに、積もる話をするにはふたりの方がいい。でも仕事や結婚式以外で、昴を預けて長時間人と会う機会はほとんどなかったから、なんとなくためらってしまう。

 どうしようかと悩んでいる間にも、私の隣でオレンジに手を伸ばす昴に、一誠さんとなっちゃんが声をかけている。


「昴。日曜日、俺たちと動物園に行かないか?」
「パンダさんに赤ちゃん産まれたんだって。ナツと一緒に見よ」
「みる! パンダさん!」


 あっさり目を輝かせる昴に、私たちの向かい側に座る父が言う。


「ママの代わりに、じーじが行くからな」
「ママ、こないの……?」


 昴は急に不安そうになって私を見上げる。うぅ、この顔を見るとやっぱり罪悪感が……。

 その時、父が宥めるように「昴」と口を開く。


「ママは大事なものを取り戻しに行くんだ。昴ともっと幸せになるためにね。だから、応援して待っていよう」


 穏やかに紡がれた言葉で、胸がじんわりと温かくなった。お父さんがこんなふうに言うなんて、なんだか意外。
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