身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
嘉月さんはその様子を見ながら、洗い物を手伝ってくれるのでとても助かる。料理に専念していると、昴がこちらにやってきてスケッチブックを広げた。
「これ、ママ。これ、かーくん」
「わぁ、ありがとう!」
火を止めてよく見ようと上体を屈める私に、嘉月さんがやや興奮気味に言う。
「都、昴の絵が進化したぞ。俺たちに髪の毛が生えたんだ」
「ぶっ」
言い方がおかしくてつい噴き出してしまった。確かに、以前はただの丸だった私たちの顔から、いくつかの線が伸びている。
笑いつつも「上手だね!」とふたりで褒めちぎると、昴は満足そうにニンマリとしていた。
それからも描いた絵を説明してくれる昴だけれど、嘉月さんを一向にパパとは呼ばない。きっとあだ名に慣れてしまったからなのだろう。
「ねえ。かーくんのこと、パパって呼んでいいんだよ?」
さりげなくそう声をかけてみたものの、「かーくんはかーくんなの!」と言って譲らなかった。
リビングへ戻っていくわが子をちょっぴり寂しい気分で眺めていると、嘉月さんが私の肩をそっと抱き寄せる。彼は意外にも穏やかな表情をしていた。