秘夜に愛を刻んだエリート御曹司はママとベビーを手放さない
「俺が寝かしつけておくから、清香はゆっくり風呂に入っておいで」
「でも疲れているのは志弦さんだって同じなのに」
「いいから。というか、会えない日が多いぶん、一緒のときは俺も碧乃に尽くしたい」
 彼は結構尽くしたがりだ。碧乃にメロメロなこともわかっているので、ここは素直に志弦に任せることにした。

「じゃあ、お言葉に甘えて」
 いつもバスタイムは碧乃と一緒で、楽しいけれど大騒ぎなので、ゆっくりと湯に浸かれる時間はなによりの贅沢だ。バラの香りのバスソルトを入れて、ふぅと手脚を伸ばす。
「優しいな、志弦さん」
 志弦がいつも口にする『碧乃に尽くしたい』という言葉は、清香のためでもあるのだ。
 碧乃が生まれて半年くらいの頃、清香は慣れない育児に必死になりすぎて倒れてしまったことがあった。散歩は必ず午前中とか、授乳中のスマホは絶対にNGとか、今から思えば厳しすぎるルールをたくさん自分に課して、キャパオーバーになってしまったのだ。

 それ以来、彼は清香が無理しすぎないようにと、いつも気にかけていてくれる。
(私も志弦さんになにか恩返ししたいな)

 風呂からあがると、リビングルームには志弦ひとりだった。
「碧乃はもう寝ましたか?」
「あぁ。寝かしつけをする間もなく眠ってしまって、ちょっと寂しい」
「あはは。志弦さんもお風呂、どうぞ。広くて気持ちがよかったですよ」
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