秘夜に愛を刻んだエリート御曹司はママとベビーを手放さない
 ますます清香を浮かれさせる台詞とともに、彼は頬にそっと口づけた。触れた箇所が熱を持って、その熱さがあっという間に全身に広がっていく。
「え、や、あぁ……」
 動揺のあまり言葉にならない声を発する。真っ赤な顔で彼を見つめ返すだけ。彼はふっと甘く笑む。
「違うか。今のは君へのサービスじゃなくて、俺がもらうご褒美だな」

 予告どおりに、プライベートジェットは昼過ぎには碧美島の空港に着いた。彼はこの島に車を所有しているそうで、ここから先はドライブデートになると言った。
 クラシックカーと呼ばれるものだろうか。レトロな雰囲気のモスグリーンの外車は、東京では街並みから浮いてしまいそうだが、この島にはしっくりと似合っていた。

「どうぞ」
 助手席の扉を開けて、彼がエスコートしてくれる。
 海沿いに続く一本道を、ふたりを乗せた車が静かに走り抜ける。大きく開けた窓から爽やかな風が吹き込んできた。
「いい気持ち」

 車窓の先に広がる波のない穏やかな海を眺めていると、無意識に頬が緩む。
 碧美島の海はその名のとおり、碧がかった美しいブルーをしている。地中海沿岸の国を模しているという街並みもあいまって、異国を旅している気分になる。
「知人の写真家は、碧美島の海が日本一だと言ってたな」
「わかります。神秘的で、惹きこまれるような碧ですよね」
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