秘夜に愛を刻んだエリート御曹司はママとベビーを手放さない
 ふかふかのベッドから上半身だけを起こして、清香はまだ横になったままの彼を見つめる。意外なことに寝起きはよくないようだ。目覚めてはいるのに、ぼんやりとしている。
ブラインドの隙間から差し込む朝日が、気だるげな顔の横顔を照らす。
「おはようございます」
 それでも、清香の言葉には甘い笑みを返してくれる。
「おはよ」

 彼はゆっくりと身体を起こす。裸のままだった上半身にローブを羽織りながら、彼は尋ねた。
「テラスで朝食にしようか?」
 清香の硬い表情に気がついたのだろう、彼は苦笑して外国人のように両手をあげて肩をすくめてみせる。
「そうだったな。君の告白を聞く約束だった」
「はい」

 今さら打ち明ける必要は、おそらくない。どうでもいいと思われるか、軽い女だと軽蔑されるかのどちらかだろう。だが、清香には意味がある。
(嫌われてしまったほうがいいんだ。二度目を望んだりしなくて済むように……)
 なんとも勝手な言い分だ。自分の身勝手さを呪いたくなる。

「あまりいい話でなさそうなのは想像がつく。デートは一度だけと強調したこと、そして名前を隠したがったこと。このあたりに関係があるのか?」
 彼は目を伏せたまま、清香の顔は見ようとしない。
「私、もうすぐお見合いするんです。だからその前に……火遊びをしてみたくて。付き合ってくれてありがとうございました!」
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