だめんずばんざい






「親子の形も兄弟の形も家族の形も様々だからね。奏太くんと櫂くん、薫子さんは3人でバランスのいい、心地よい三角形ができているんだろうね。年の近い兄弟だから当然ケンカもするだろうけど、1対1でバチバチやり合うのではなく、誰かがいいクッションになる。それに…言い方は失礼になるけれど…お母さんから身を守る、心を守るという絆が出来上がっているんだね」
「わかる気がするよ、父さん。二人兄弟だとバチバチやって…仲直りって難しいんだよ」
「寛人は口で難しいって言うけど、いつも歩み寄るのは俺」

俺がそう言うと奏太くんがケラケラと笑う。

「兄ちゃんの宿命?」
「うーん…どうでもいいかって、面倒になるんだよね」
「岳人さん…ちょっと薫タイプのところがあるの?薫もどうでもいいかって面倒になるんだ…母さんのことも含めてね」
「似ているところはあるよ。ゴロゴロ大好きだからね」
「ははっ、よかった。薫が怒られない」
「怒ることなんてひとつもないよ。奏太くんの話を聞いてね、例えばカオルちゃんは洗濯の時間がバラバラなんだよ。それってお母さんにしたら‘だらしない’ってことなんだろうって思った。でも俺からすれば洗濯物の量によって調整しているのかなぁとか、今やりたい気分なんだろうな、で済むんだよね」
「うん、安心した。岳人さん、薫のことよろしくお願いいたします」

深々と頭を下げる奏太くんを見て、あのクソババアにはカオルちゃんを生んでくれたことと、優しい兄弟も生んでくれたことだけは感謝すると思った。
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