だめんずばんざい




とにかく寛人のところから荷物を出したいし、車も置いたままだし…そっちにも荷物はあるけどそれはいいかな…部屋が落ち着いて整えられたらいいよ…うーん、場所はカオルちゃんと相談する。彼女の負担になることはしたくない」

じゃあ…と小さく言いスマホを放り出したガクトはうつ伏せになり、両腕に顔を乗せて

「叔母夫婦から聞いてたらしいよ、カオルちゃんのこと」

頬が押さえつけられ、いつもと少し違う音色を放つ。

「だろうね…」
「寛人も俺が出てるのは言ってたらしい」
「もう結構前だもんね」
「結婚するって言ったら会わせて…だってさ」
「だろうね…誰でも言いそう」
「週末の話になるけど、引っ越しをちゃんと済ませたいからまだ先でいいよ。俺、カオルちゃんが来てくれる部屋をちゃんと整えたいんだ」

頬を押さえつけて話してヨダレが出たのか、彼は口元を手の甲で拭いながら起き上がった。

「母さんたちと会う場所は外でもいいし、実家でもいいし、カオルちゃんの楽なところにしようね」

私が緊張しないように言ってくれたんだろうけど…まずこの新築マンションが緊張するんじゃない?

「カオルちゃん?」

ガクトは週末一緒に訪れた新しいマンションのエントランスで立ち止まった私の手を優しく引いた。

「…ホテルみたい…」

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