だめんずばんざい





地上38階地下2階建てのハイクラスマンションの12階の1室は1LDKプラス、ウォークインクローゼットという間取りだった。

「カオルちゃん、もっと高いところが良かった?」
「ううん、12階で十分高いと思う」
「でも…上の2LDKにすれば良かったかな…結婚してもここでいい?狭い?」

間取りは1LDKだが、広さは私の部屋の倍以上のようだ。

「十分過ぎると思うよ?荷物が入りきらないだけで、私の部屋でも生きていけるんだもの」
「そうだね。カオルちゃん、ここに好きなもの置いて」
「好きなもの?」
「コーディネーターカオルになってよ。ベッドとロボット掃除機2台、それから週1回のハウスクリーニングは予約してあるけど、あとはまだだから」
「ロボット掃除機もハウスクリーニングも初体験だ…」
「ははっ、俺はそれがないと人間らしい生活が出来そうにないってわかっていたからね」
「ガクトは、どうしてここにしたの?」
「うちの施工した中で、設備と施設を見比べて決めた。キッズルームなんて俺には不要だけど、カフェがある方がいい…とかね。ここね、ライブラリーがあるよ」
「ほんと?」
「ほんと。偶然だけど、カオルちゃんにぴったりの物件だね」
「私が使ってもいいの?」
「いいよ」
「すごい…でも…ここ、私がコーディネートすると、座卓の隣に布団があるかもよ?」
「カオルちゃんの部屋のを持ってくる?」
「ふふっ、信じられない冗談言うね」
「冗談でもないよ。本当にいいよ?俺、あの配置が気に入ってる」

エントランスでは緊張したけれど、がらんと広い1LDKの部屋でガクトと話しているといつの間にか通常運転になっていた。

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