だめんずばんざい





「何もかも真新しくて…シャリ…このTシャツがボロ切れに見える…シャリシャリシャリ…シャリ…」

昨日まで何とも思わないで着ていたTシャツが、マンションでは急にヨレヨレに見える。

「カオルちゃん…シャリシャリ…気にしないで大丈夫…シャリシャリシャリ…」
「シャリ…うん…シャリシャリ…これではゴミ出しにも出られないけど…シャリシャリ…」
「ここでだけならいいよ…シャリ…何も着なくてもいいよ…シャリシャリ…」
「裸族?…シャリ…ごちそうさま」

私はリンゴを食べていた手をヨレヨレに見えるTシャツで拭くと、シャワーの後で濡れたままだった髪を乾かしに洗面所へ行く。今までの倍ほどの鏡の前でドライヤーをかけると、やっぱりTシャツはヨレっと見えた。荷物の受け取りなんかでも、ここでこれでは良くないよね…持ってきた中でも選別しなくちゃ。

「ねぇ、ガクト…」

聞きたかったことを思い出して洗面所から顔を出すと

「うん?」

と返事しながらガクトがTシャツを脱ぎ始めている。シャワーも終わっているのに…絶対‘裸族’の言葉に反応してるんだ。私は見なかったことにして洗面所で歯ブラシを手にした。

「あれっ…?カオルちゃ~ん、何?」

そう言いながら洗面所に来たガクトの手にTシャツはないから床の上だね…

「何でもない…歯みがきに呼んだだけ」
「一緒にしよっか」

彼はご機嫌に歯ブラシを持つと、片手を私のお腹にぐるりと回した。

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