恋なんて、正気の沙汰じゃない!
「こ…怖いよ、先生。」
やっと出た言葉。
でも、触れていた髪をパッと離して、ニッと笑う。
「冗談だよ、冗談。」
いつもの先生に戻った。
冗談……
そうは聞こえなかった。
というより、そう見えなかった。
だって、先生の目は本気だったから。
だけど、正直……少し羨ましい。
それほど本気になれる人がいる先生も、それほど本気になってもらえる相手の人にも。
私には、きっと無理だから…
そう思っていたら、急に眠気が襲ってきた。
……あれ?
なんでだろ?
セミの鳴き声も、野球部の掛け声も、聞こえなくなる…
先生の方を見ようと、瞼を開けようとするけど、重たくて……
次第に薄れていく意識の中で、最後に聞いた声は……
「おやすみ」
先生の酷く優しい声だった。