ぼくらは薔薇を愛でる
日が暮れる頃、騎士の寮に戻ってきたジョブズは、手土産を持って代理で街歩きに付き添ってくれた騎士の部屋を訪れた。
「今日はすまなかった、特に変わりは無かっただろうか」
中に入れと誘ってくれたが、戸を開けたところで立ち話を選んだ。
「無事に帰城なさったから安心してくれ。変装もうまく行ったからな。お前の方もうまく行ったのか?」
「ああ、俺の方も……うん。あ、仕立て屋には行けただろうか」
「行けた。だが仕立て屋だけで今日は帰ってきたんだよ。途中から元気がなくなって。エクル様は大丈夫だと仰せだったが、お疲れだったんだろうか。帰城後はいくらか顔色も戻られていたが、明日にでも様子を見て話を聞いてみてくれるか。必要なら侍医を――」
「元気が? そうか、わかった。明日お顔を拝見してそれ次第だな。とにかくありがとう、これは我が家のシェフが作った焼き菓子だ、夜食にでもしてくれ」
持ってきた紙袋を手渡した。いつかエクルに食べてもらおうと、シェフに頼んで試作してもらっていたものをもらってきた。歯ごたえも良くナッツの風味もあって美味しい。
そうして自室へ戻りながら考えた。
――元気が無かった、だと? 変な輩に絡まれたか? 違うな、それならあいつが話してくれるはずだ。街歩きはエクル様の楽しみなのに……一体何があった?