経理部の女王様が落ちた先には
この人が口付けをしてくれた腕時計を、わたしの手の中に置いてくれた。



「あとは、アレ。」



そう言って、目の前のこの人が、大量にあるブランド物の紙袋のうちの1つを指差した。




「アレが、1番大切。その象徴だからな?」




「はい・・・。」




そう言って、手の中にある腕時計を両手でギュッと握った。
その手を、この人が優しく重てくれる。




「面接は特にいらないから。
さっき試着中に電話で話をつけておいた。」




そんな話に、わたしは驚く。





「じゃあ、頑張って。」





深く、優しい目で、わたしに笑った。





その目で、分かった・・・。





この人は、もう・・・






“わたし”に会わない。






もう、二度と・・・






“わたし”には、会わない・・・。






わたしのお城の短い廊下を、騎士のようなこの人が歩き、去っていく・・・。







わたしが渡したパンダの付箋も、何の意味もなくなってしまった・・・。
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