経理部の女王様が落ちた先には
わたしの最後の言葉を聞き、騎士のこの人はゆっくりとベッドから立ち上がり、スーツを素早く着ていく。



「もしも・・・」



少しの時間が経ち、スーツを着終えた騎士のこの人が、ベッドで俯いたままの、わたしの頭の上から声を掛ける。



「もしも、“何か”あったら、教えて。
必ず、教えて・・・。」



名前も、連絡先も知らない、騎士のこの人が、そんなおかしなことを言う。



「分かりました・・・。」



俯きながら、そう、返事だけをした。



そんなわたしを、スーツを着た騎士のこの人が、優しく抱き締めてきた・・・。



「また、会おう。」



その言葉に驚き、わたしは恐る恐る顔を上げる。



「いつもの・・・あの喫茶店で、待ってて。」



我慢していた涙が、次々と流れてきた・・・



「必ず、会いに行くから。」



わたしは泣きながら、頷く。



「そしたら、今度はデートしよう。」



強く抱き締めてくれる騎士のこの人を、わたしも抱き締め返す。



「必ず迎えに行くから、待ってて。」



その言葉に、わたしは騎士のこの人を見上げる。
そんなわたしを、深く、優しい目で笑い、見下ろしてくれる。



騎士のこの人の背中には、窓から見える、とても綺麗な月があった・・・。



そして、ゆっくりと、唇を重ねてくれた・・・。



少しだけ香るタバコの匂いが、した・・・。
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