先生、私がヤリました。
遊具の敷地から上を見上げたら三棟のコンクリートで出来た巨人に囲まれてるみたいな気分になりました。

閉塞的だからでしょうか。
上から吹いた風が逃げ場を無くして、その場所だけ生ぬるい風が拭き続けてるみたいでした。

どの部屋も据え付けなのか緑色のおんなじ物干し竿が掛かっていて、洗濯物が揺れていたり、室外機の上に鉢植えを乗せてる部屋もあるのが見えました。

室外機の上なんかに乗せてしまったら熱ですぐ枯れちゃいそうって上を見上げながらどうでもいいことを考えました。

「こっち。」

ボーッと見上げていたら女の子に手を引かれました。
黙って着いていきました。

エレベーターは無かったので階段で上がりました。

一棟六階建て。
「一階」「二階」っていうよりは「半階」って感じがしました。

学校の階段で言うと、一階と二階の間にある踊り場に部屋を作ったみたいな。

半階に部屋は二つ。
踊り場くらいのスペースだから隣の部屋のドアが大人が横並びに頑張って三人立てるかどうかくらいの距離にありました。

お友達の部屋のドアの前で女の子がドアを叩きました。

ドンドン、とコンコンが混ざったみたいな鈍い音がしました。
鉄扉だったと思います。
所々メッキが剥がれたグリーンの下から赤錆が浮いてました。

ドアノブは銀色。
そこのパーツだけ冷たそうに見えました。

「チャイム押さないの?」

「壊れてる。」

試しに押してみたら女の子の言う通り、しばらく押されていないのかちょっと固くなったボタンがカチンって鳴っただけで、インターホンの音は鳴りませんでした。
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