とある悪役令嬢は婚約破棄後に必ず処刑される。けれど彼女の最期はいつも笑顔だった。
 その後、イースト国では、サルウェル王太子が聖女の暗殺を依頼していたという事実が明らかにされた。
 聖女の命を脅かす事は国に対する反逆行為と見なされ極刑となる。
 それは例え王太子であろうと覆る事は無く、サルウェル王太子は国民達の前で処刑される事になった。
 人望が地に落ちた王太子の処刑に、多くの国民が沸いたらしい。

 更にその後、次第に聖女に対する国民の見方も変わり、『召喚されたのは聖女ではなく男を惑わし国を混乱に導いた魔女なのでは?』という声もあがり始めた。
 聖女の存在は危険視され、女性のみが存在する修道院へと送られ、国の監視下に置かれて暮らしているらしい。
 今後、聖女召喚の儀を行うかどうかも検討されるとか。
 
 まあ、どれも私達には関係の無い事だけど。

 私とエドは、ノース国の人里から離れた一軒家で一緒に暮らし始めた。
 彼が用意していたのは一人で住むには大きすぎる家。

「もしも私が一緒に暮らす事を承諾しなかったらどうするつもりだったの?」

 と聞くと、

「家のすぐ近くにもうひとつ小さな小屋を建ててるから、そこに住むつもりだった」

 とサラッと答えるのだから、私も思わず笑ってしまった。
 彼は意地でも私の側から離れるつもりはないみたい。

 私達は名前を変え、身分を偽りながら暮らし始めた。
 けれど、二人だけの時はお互い本当の名前で呼び合った。
 決して贅沢な暮らしとは言えなかったけれど、彼は私に何も不自由させる事はなかったし、私も毎日が新鮮で楽しかった。
 時々、悪夢にうなされ涙を流す私を、彼は優しく抱きしめて一緒に泣いてくれた。
 私が悲しむと、彼は私以上に悲しむものだから、気付くと何故か私が彼を慰めていた。
 私が笑うと、彼は私以上に嬉しそうに笑っていた。

 本当に、彼は私を心の底から愛してくれた。
 誰よりも幸せにしてくれた。

 あの時の言葉通り、一生をかけてそれを証明してくれた――
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