咲き誇れ、麗しい華。

おかしな仮装と私の居場所

「暗くなる前には帰ってくるのよ」

「はーい」

(かおる)も、あんまり遅くならないようにね。今は日が出てて暖かいけど、夕方からは冷えるみたいだから」

「はいはい。飯食べたらすぐ帰るって」



日曜日の午後1時過ぎ。

エプロン姿の母に「いってきます」と兄と口を揃えて声をかけ、家を出た。



「まったく、昨日から何回も何回も。いくつだと思ってんだか」

「まぁまぁ。それより、晩ご飯食べてくるの?」

「うん。調べたら、映画館の近くにラーメン屋さんができててさ。値段も手ごろだったから、せっかくなら食おうぜって」



それぞれ自転車を押しながら、横並びで住宅街を歩く。


濃い赤のパーカーに黒いデニムパンツ。

ハロウィンカラーを取り入れつつも、動きやすさを重視したカジュアルコーデ。


そんなオシャレな兄に対し、私は頭から爪先まで全身真っ黒。

猫っぽさを意識して、トップスは毛足の長いニット、ボトムはスウェード素材のショートパンツを選んだ。


会場に着いたら、猫耳カチューシャと尻尾、ヒゲを描いて、完全に猫に変身する予定だ。
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