咲き誇れ、麗しい華。
背中を擦られてゆっくりと顔を上げる。



「僕の妻は、中学時代の同級生で、当時から好きだったんだが……付き合ったのは大学生になってからなんだ」

「えっ。じゃあ、3年以上も片想いしていたんですか？」

「そうそう。高校が別々だったから、卒業する時、今の侑希くんみたいに悩んでね」



2人で遊びに行ったり、お互いの家にもお邪魔したりと、いわゆる友達以上恋人未満の関係。

だが、遠距離恋愛に自信がなかったため、告白はせずに卒業したという。



「ハガキと手紙で連絡は取り合っていたんだが、1回も会うことはなくて」

「それは、寂しいですね」

「うん。入学したての頃は毎晩のように夢に出てきてた。だから大学で再会した時は、もう本当に嬉しくて」



目を細めて頬を赤らめる監督。

毎年記念日の月が来ると、当時の手紙を読み返しているらしい。



「両片想いだったから、遠距離でも上手くやれていた可能性もあったかもしれないが……僕は、あのタイミングで良かったと思ってる。1度離れ離れになったことで存在のありがたみに気づけたからね」



1つ1つが、心に突き刺さる。


そうだよな。

友達に会えるのも、勉強ができるのも、好きなことを楽しめるのも。

全部、当たり前なんかじゃないよな。



「どんな選択をしても、どんな結果になっても、必要なご縁なら、また巡り合えるから」

「ありがとうございます。頑張ってみます」



お礼を言うと、「侑希くんなら大丈夫！」と励まされるように強く背中を叩かれた。


巡り合い、か。

正直ピンと来てないけど……人生の先輩が言うなら、信じてみようかな。


恩師の言葉を胸に刻み、自分なりの言葉で想いを伝えると決めた。
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