政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
「あとはよろしく」

 女性へ簡潔に言って久我さんは部屋を出て行った。

「柳沢さまはじめまして。私、久我の秘書をしております坪井(つぼい)と申します」

 秘書ってことは久我さんにずっと付いていたはず。一連の流れを見られていたと知り、羞恥心から身体が熱くなった。

 坪井さんは私とは真逆のタイプで、印象的な猫目が映えるいい意味で派手な顔立ちだ。背はおそらく私より十センチは高く、モデルのようにすらっとしている。

「さっそくですが、いくつかお着替えをご用意いたしました。こちらに袖を通していただき、今お召しになっているものをクリーニングへ出させていただきます」

「あっはい。わかりました」

 ここまでついてきて断る選択はない。部屋で応急処置として染み抜きをするのかと考えていたので驚きはしたが、なるようになれという思いで流れに身を任せた。

 用意されていた洋服の中から、ミントグリーンのロングシャツワンピースを選んだ。これなら今日履いているベージュのパンプスにも合うし、ウエスト部分にあるリボンでサイズ調整ができる。

 着替えを終えて坪井さんに私服を預けてから、テーブルの上に置きっぱなしにしてあった名刺をしまおうと手に取る。
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