政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
 千石さん同様に私もきちんと挨拶をしていない。それなのに私の名前を知っていたのは、会話を聞いていたからだよね。もちろん、愛人に誘われているところも。

 こんな小娘のどこに魅力があるのかと思っただろうに。

 顔はおうとつが少なく平面的で童顔だ。とくに目が大きく、黒目と白目の境がハッキリしていて子供っぽい印象を受ける。

 大人びたメイクや服装は似合わないし、カジュアルでアクティブなイメージを持たれることが多い。

 だからちょっとでも大人っぽくしようと、緩いパーマのかかった黒髪を前と横、そして後ろの長さを揃えたワンレンロングにしている。

 坪井さんのような女性だったら愛人契約もわかるけれど。そう考えたところで視線を感じて顔を上げると、射るような瞳で私を見据えていた坪井さんと視線がかち合う。

 えっ、なんだろう。

 鋭い目つきが怖くて思わず唾を飲みこんだ。

「どうかなさいましたか?」

 にこりと微笑んだ坪井さんに変わった様子はない。

 見間違え……というか、睨まれたなんて私の勘違いかな。
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