政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
 久我さんはスマートフォンの画面を閉じ、店員が離れてから私の方へ戻した。

「俺も昔、犬と猫を飼っていたんだ」

 喋りながら新たなワインが注がれたグラスを手にしたので、私もグラスの脚を持って目礼を交わす。しっかりと味わってから会話の続きをしようと口を開いた。

「どちらも可愛いですよね。他にも飼われていたんですか?」

「ふわふわ系はそれだけ。あとは蛙とかザリガニとか」

 ふわふわって言い方が可愛い。

「男の子って感じですね」

 目の前にいる立派な成人男性のやんちゃな幼少期を想像して、クスッと笑い声がこぼれる。

 蛙とザリガニなんて親にとってはたまらなかっただろう。私もお母さんに、蛙の鳴き声がうるさいとか、ザリガニの水槽が臭いとか散々文句を言われたもの。

「今でも生き物はお好きですか?」

「ああ。だから柳沢さんのボランティア活動には興味があるし、動物保護施設の計画も魅力的だと思う」

 青臭いことを言っていると否定されると思っていたので、予想外の反応に「えっ」と動きを止めた。
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