政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
「今も預かっているのか?」

 料理を咀嚼しながらこくこくと頷き、バッグから取り出したスマートフォンの画面に写真を表示させて久我さんに手渡した。

「茶トラの女の子です。甘えん坊で可愛いんですよ」

 オレンジがかった明るい赤色の地毛に、やや暗い赤色の縞模様が入っている子猫だ。

「え、めちゃくちゃ可愛いな」

 スマートフォンを眺めながらぽろっとこぼした台詞からは、久我さんの素が垣間見えた。

 もしかして動物が好きなのかな?

「スライドして遡ってみてください。タオルを肉球でふにふに踏みつけている動画があります」

 久我さんは人差し指を左から右へスライドすると画面にくぎ付けになる。それからすぐに柔和な微笑みを浮かべたので、こちらも心が穏やかになって肩から力がすっと抜けた。

 久我さんが動画に夢中になっている間にお皿を空にしてワインを口にした。アミューズ、スープ、魚介と続いたので、次でようやくメインの黒毛和牛が運ばれてくる。

 楽しみだなあと思ったところでタイミングよく個室の扉の向こうから声がして、店員が次の料理を運び入れる。
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