政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
 手を引かれて部屋に戻ると照明は落とされキャンドルの明かりだけになっていた。

 どういうことだろうとスタッフの姿を捜した私に対し、涼成さんは落ち着いた様子でいる。

「足元に気をつけて」

 部屋の中心まで歩みを進めたあと、ひとつの椅子を引いて私を座らせる。そして足元に跪いて私を上目遣いで見上げた。

 混乱して言葉が見つからない。目の前の綺麗な顔を見つめ返していると、涼成さんがジャケットのポケットから小さな箱を取り出した。

「あ、それ……」

 ジュエリーショップで受け取ったものだ。

 もしかして指輪をつけるためにこんな素敵な演出をしてくれたの?

 高鳴る心臓の音が部屋に流れる音楽をかき消す。固唾を呑んで見守っていると、蓋を開けた箱の中にあったのは初めて目にする指輪だった。

「えっ」と口の中で音にならない声がこぼれる。
< 71 / 137 >

この作品をシェア

pagetop