政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
「……あの日、俺がプロポーズのあとに言った言葉を覚えているか?」

「どれだろう?」

 いろいろな話をしたので、なにを指しているのかわからない。

「俺は君を好きなわけではない、と言ったけど」

「ああ……」

 あの時はなにをあたり前のことを、という感想だったけれど、今聞くと胸を切り裂くような鋭い痛みが走る。

「すまなかった。恵茉を傷つけた」

 太腿の上で作った握り拳の上に涼成さんの手が重なる。

「そんなことないよ」

 口角を上げて微笑んだが、涼成さんはくしゃりと顔を歪めた。

「やり直させてほしい」

 どこか苦しそうに言う声が鼓膜と心臓を震わす。

「恵茉が好きだ。俺とずっと一緒にいてほしい」

 ……え? 好き?

 いったいなにが起きているのか。目を大きく開いて呆然とする。

「出会ったあの日、俺はもう恵茉に惹かれていた。それは今だからこそわかることで、あの時は自分の気持ちなのに気づいていなかった。俺の方が先に恵茉を好きになったけど、受け入れてくれるか?」

 珍しく自信なさそうな、弱り切った表情をしている涼成さんを見て胸がいっぱいになる。
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