私の嘘と彼女の真実
「ソ、ソンナコトナイヨ……?」

否定しながらも目が泳ぎ、片言になっていく。
季実枝自身あのあと、彼に抱かれる気持ちよさを思い出した身体を持て余し、ひとり自分の身体を慰めた。

……もう一度、和史に抱かれたい。

そんな気持ちがないとは言えない。
しかし、親友を裏切るのは一度だけと決めたのだ。

「ふぅん。
そうか?」

お前の考えていることはお見通しとばかりにニヤリと笑い、和史はビールを飲んでいる。
季実枝はなにも返せなくて、黙ってグラスに口をつけた。

「……てかさ。
そんなに友子との結婚生活が苦痛なら、別れたらいいじゃん」

昔と違い、離婚なんていまどき珍しくもない。

「あー……」

長く発したまま和史が固まる。

「……離婚、離婚なー。
あいつ、妊活するって仕事、辞めただろ?
今離婚したら生きていけないし」

困ったように和史が笑う。
そこまで彼が考えているだなんて知らなかった。

「それとなく再就職勧めて、どっか採用されたら考える」

「優しいね、和史は」

だから、一度は好きになった。
別れたのも本当は……ずっと後悔していた。
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